映画『ROOM237』を見た後に……キューブリック監督って誰なの!?

 スタンリー・キューブリック監督の映画「シャイニング」を勝手にアナライズし映画化したトンデモドキュメンタリー映画「ROOM237」がむちゃくちゃ面白いんです。勿論かなり人を選ぶ著作だという事は間違いありませんが、その著作が好きすぎて妙なアナライズをやり始めるオタクをニヤニヤ眺めるのが好きな人であれば、まことに楽しめる映画かと思います。

 そんなスタンリー・キューブリック監督のシャイニングをそれぞれの変態オタク達が勝手にアナライズしたこの映画ですが、「そもそもスタンリー・キューブリック監督って誰なの?」と思っている方もいるかもしれません。

 彼自身は無冠の帝王とも呼ばれておりますが、まことにカルト的な人気を誇る映画監督の一人です。スピルバーグ監督とも交友が深かったようで、映画AIの原型になったものはキューブリック監督の残した遺作が元だと言われています。この著作においてはそんな著作のまことに細かいところまで掘り下げてあるのです。

ドキュメンタリーは他にもあります!

 「ROOM237」の他にもCS放送などで放送されていた「キューブリックの秘密の箱」といったキューブリック監督のドキュメンタリー著作があります。こちらは一人の映像ライターがキューブリックの家を訪ねて、半分以上を占有しているという資料を保管していた1000個以上ある箱を手がかりとしてスタンリー・キューブリック監督とは「どんな人物だったのか?」「果たして何だったのか?」というのをアナライズし、見つけていこうとするドキュメンタリー番組でしました。この著作も、ROOM237とは別の意味で、真面目な出来になって増して、まことに知的好奇心をくすぐられるスリリングな著作でしました。

 箱のなかには沢山の写真が入っていたのですが、元々彼自身が映画以上に写真をこよなく愛していた事も、事実として伝えられています。そのキューブリックの甥が撮影したという無数の写真や、彼自身が撮影した写真を視ると、彼が映画を作るにあたりステージとなる背景をいかに重視していたかがありありと見て取れます。また、映像に見える部分でもそれは凄まじい量と質を誇っておりましました。またまた、キューブリック監督はファンレターをまことに大切に整理していて、著作に対して好意的であるのか、それとも否定的であるのかというのが一目でわかる記号をつけていたようでしました。更には、非常事態が怒った時のもしもに備えて、嫌がらせという記号もつけてあるものがあったそうです。つまりは、何かの事件に巻き込まれた際に捜査の役に立つようにというはからいだったということです。キューブリックの秘密の箱のスタッフが実際にその手紙を出した人間にわざわざ会いに行くと、手紙を出していた本人が逆恨みをしているという事実がわかりまことに面白いなと思いましました。

 また、資料自体にはホロコーストを取り扱ったものがまことに多く見られたみたいで、キューブリックがそれをテーマにした著作をつくろうと指定たようだということがよくわかります。ですが、スピルバーグ監督に先を越され「シンドラーのリスト」を映画公開したことが原因化、ホロコーストに関する映画は断念してしまっています。また、その他にもわかっている事実として、キューブリック自体が、その資料の箱の操作性をまことに重視していたという事実です。箱の蓋が簡単に操作できるようにと特注で作らせるほどだったと聞きます。また、文房具に対する熱も相当なもので、雑記帳を常に持ち歩いたり、行きつけの文房具店に頻繁に通っていたそうです。また各新聞紙に載った映画の広告に関して、指定したサイズと寸分たがわないかというのを年みつに測って調べていたという神経質な事実も紹介されておりましました。

 製作者がなんと5年もかけて調べたというこのキューブリックの秘密の箱も、今になってはロンドン芸術大学に寄贈されて保管庫の中で眠っているそうなのです。その箱を調べながら彼自身の本質は一体なんだったのかを問うのならば、死の直前でとうとう受賞した1998年D.W.グリフィス賞のスピーチの言葉があげられるでしょう。《映画監督なら誰でもわかるですね。監督とは「戦と平和」の脚本を遊園地のバンバーカーで書くほど大変ですが、名作が生まれた瞬間はこの上ない喜びがあります。》

 そんな人気の高いスタンリー・キューブリック監督ですが、その人気の著作はやはりSF三部作「博士の異常な愛情」、「2001年宇宙の旅」、「時計じかけのオレンジ」を発表したことかと思います。3作とも映画史を語るにおいて絶対に外せない傑作となっています。

独特なオブジェ

 キューブリックがカルト的な人気を得ることになった最大の理由は、彼の著作のそれぞれに、独特なオブジェがちりばめられているからではないかという意見もあります。それは視るものを興奮させてやまない不思議な形のもので、「2001年宇宙の旅」における黒石板、そしてHAL。この2つのオブジェのもつ視覚的印象はいまだに強烈なパワーを持っています。「2001年」が映画史上のナンバー1著作のひとつとなりえたのもそこら辺の感性に起因するものかと思われます。

数々の特殊撮影を実験・確立

 キューブリック監督は映画の技術進歩に大きく貢献した人物でもあります。彼は他監督がいまだ試したことがない演出や特殊撮影に果敢に挑戦し、その全てにことごとく成功していましました。

 特に有名なものは「2001年」のフロント・プロジェクション《二枚目の写真》です。スタジオ内で演技する役者のバックに、あらかじめ撮影しておいた背景を合成させるというものですが、今までの合成映像にあった違和感が解消されており、キューブリックはこれによりアカデミー賞視覚効果賞を受賞しました。

 「バリー・リンドン」では高性能レンズを使って、照明をいっさい利用せずに室内での撮影に成功しています。「バリー・リンドン」は今でもなお美術面において最高の著作と評されることが多いです。

 「シャイニング」ではステディカムという装置を使っており、スムーズな移動撮影が実現しました。ステディカムは、今のスタジオでは頻繁に使われている装置であるが、その装置を最大限に生かした最初の著作は「シャイニング」です。

キューブリックの映画理論

 キューブリックは映画には2つの要素があるということを語っています。それは「内容」と「形式」。彼が影響を受けた監督はチャールズ・チャップリンとセルゲイ・エイゼンシュテインであるが、チャップリンには「形式」を無視しても生きる「内容」が、エイゼンシュテインには「内容」を無視しても生きる「形式」がありまして、2人の著作を比較することで、映画が理解できるというのです。彼が「このどちらかを選ばなければならないとしたら、チャップリンを取る」といったのは有名なエピソードです。

 ちなみに、チャップリンの映画とキューブリックの映画の両方に出演した唯一人のスターであるアドルフ・マンジューは、キューブリックを見て、「最もチャップリンに似ている監督だ」といったといいます。

ロック・ミュージシャンも納得のミュージックセンス

 みんなが恐れ崇めていたキューブリックの才能のひとつに、ミュージックセンスがあります。ジャズ奏者としての経験も豊かな彼ゆえに、あたりまえといえばそうかもしれないが、その描き方が異常なまでに驚異的なので、ロック・ミュージシャンの間からも、しばしばお手本にされます。「2001年」で<ツァラトゥストラはかく語りき><美しく青きドナウ>をこれ以上ないイメージで宇宙と結びつけたその頭脳はいったいどうなっているのか? 「時計じかけのオレンジ」でのベートーベン、「バリー・リンドン」でのヘンデルなどなど、彼の映画は全て映像とミュージックが見事にシンクロしていました。キューブリックこそ最高のロック映像アーチストだったというミュージック評論家も多数います。実は、かのビートルズも次回のメインアクター映画の演出をキューブリックに依頼したことがあったのです。

黒澤明も大絶賛「バリー・リンドン」

 日本のみならず、世界において最高の監督との誉れが高い黒澤明。この大巨匠がキューブリックの「バリー・リンドン」に腰を抜かしました。黒澤監督が、この映画を見た後にキューブリックにお褒めの手紙を書いたという逸話もあります。「バリー・リンドン」はキューブリックの著作にしてはあまり知られていないが、映画マニアの中にはこれを彼の真の最高傑作という者も少なくありません。18世紀ヨーロッパを細部まで再現したその力量と、葉っぱ一枚一枚の輝きが確認できるほどの透き通った映像美、そして民謡やクラシックの絶妙な引用が功を奏しており、落ち着いた満足感を味わわせてくれる大作です。特に軍隊が横一列に並んで行進していく戦のシーンにあふれるロマンチシズムの広大さは計り知れありません。これを見ずしてキューブリックを語るなかれ。

映画『ROOM237』を見た後に……キューブリック監督って誰なの!?