監督なりすまし詐欺を映画化「アイ・アム・キューブリック!」とは?

『アイ・アム・キューブリック!』は2005年のイギリス・フランス合作映画。1990年代のイギリスで映画監督スタンリー・キューブリックになりすました実在の詐欺師アラン・コンウェイを描いた犯罪コメディ映画です。2005年10月6日に「ディナール英国映画祭」にて初公開されました。日本では劇場未公開ですが、2011年6月24日にDVDが発売された他、WOWOWで放送されました。

サウンドトラックにはロック・ミュージシャンのブライアン・アダムスが加わっています。

ストーリー

1990年代のイギリス。詐欺師のアランは、有名な映画監督スタンリー・キューブリックになりすまし、自分の次の映画に使ってやるなどと騙して、食事や酒をおごらせ、巧みに金を巻き上げて暮らしていました。元々映画には詳しくないので、キューブリックの映画について問いつめられるとすぐにボロが出るのですが、それでも騙された方が恥と感じて訴え出ることがほとんどなかったため、アランの詐欺行為は徐々にエスカレートして行きます。

そんな詐欺行為の数々は、アランが偽者であることを確認したニューヨーク・タイムズの劇評家フランク・リッチの記事によって白日の下にさらされます。するとアランは精神を病んだふりをして逮捕を免れ、精神病院に入院します。病院でも巧みな演技で主治医を騙し、遂にはセレブ御用達の「リミニ・クリニック」に送られることになっています。

その後、アランは起訴を免れ自宅に戻り、1998年12月に心臓発作で死亡。その3ヶ月後にキューブリックも亡くなっています。

キャスト

  • アラン・コンウェイ - ジョン・マルコヴィッチ: 詐欺師。アル中のゲイ。
  • リー・プラット - ジム・デヴィッドソン: 歌手《ラウンジ・シンガー》。
  • メルヴィン - ジェームズ・ドレイファス: ゲイの看護師。アランとリーを引き合わせます。
  • ノーマン - テレンス・リグビイ: リーのマネージャ。
  • ピアース - マーク・アンバース: 元男娼。アランの詐欺行為を本物のキューブリックに伝えようとします。
  • シリル - ピーター・ボウルズ: キャッスル・モナ・ホテルの支配人。
  • フランク・リッチ - ウィリアム・フットキンス: ニューヨーク・タイムズの劇評家。
  • アレックス・ウィッチェル - マリサ・ベレンスン: フランクの妻。アランが偽者であることをフランクと共に確認。
  • ルパート・ロッドナイト - ルーク・マブリー: アランに騙されたファッションデザイナー。
  • ショーン - ブライアン・ディック: アランの部屋の居候。異性愛者。がさつ。
  • ミセス・ヴィタリ - リンダ・バロン: リーの熱烈なファン。
  • ステュークリードクター - アイーシャー・ダルカール: アランの主治医。

カメオ出演

  • ジャスパー - リチャード・E・グラント: ワイン・バーのオーナー。
  • 寝間着姿の男 - ケン・ラッセル: アランと同室の入院患者《右端》。名札には「K. Russell」。
  • マダム - オナー・ブラックマン: チンピラにキューブリックの家と間違われた家の夫人。
  • 2番目の患者 - ピーター・サリス: アランと同室の入院患者《右から2番目、ケン・ラッセルの隣》
  • ハッド - マーク・ウォーレン: アランがバーで出会った男。アランの虚偽を見破り恥をかかせます。

エピソード

監督のブライアン・クックは『バリー・リンドン』や『アイズ ワイド シャット』などのキューブリック監督著作で助監督を務めており、本作が映画監督デビュー作となっています。また、脚本のアンソニー・フルーウィンは長年に渡りキューブリックの個人アシスタントを務めていました。

監督を名乗る詐欺師が現れる!

 1993年7月3日の晩、ロンドンのレストランでの出来事。

 そこは、ショービジネスに精通する人々で、テーブルが満席になっていたコヴェント・ガーデンでありました。

 4人の男がテーブルに座っており、その中の1人がウェートレスに、自分は映画監督のスタンリー・キューブリックですが、ニューヨークのアクセントで話せるかと尋ねました。

 彼女がやってみせると、男は次回作に出てみないかと誘い、自宅の電話番号をおしえました。

 ウェートレスは不審に思ったが、一緒にいたのが英国議会の議員だったので信用しました。

 さらに男は、隣のテーブルにニューヨーク・タイムスの有名な演劇評論家や、ワシントン・ポストの文芸欄の記者がいると知ると、彼らの批評が気に入らないと文句をつけ始めた。

 キューブリックがマスコミの前に姿を現わすことは滅多にないため、記者たちはびっくり仰天しました。

 彼らは本物のキューブリックの写真を見たことがあるはずだったのです。

 しかし、彼らでさえも、偽者の芝居に騙されました。

評論家や記者たちは、その男に質問を浴びせかけたが、キューブリックと名乗る男はそれには答えず、後日インタビューに応じる約束をして、その場を去った。

しかし、記者がワーナー・ブラザーズへ問い合わせてみると、その男はキューブリックではなく、真っ赤な偽者だったことが判明しました。

男と一緒にいた議員はコメントを拒絶しています。

手の込んだ詐欺まがいか、単なるいたずらであったのでしょうか?

監督詐欺の正体は?

 結局、1996年のヴァニティ・フェア誌の記事により、「キューブリック」の偽者はその仮面を剥がされました。

 元旅行代理店員である、ロンドン在住のアラン・コンウェイという男だったのです。

 コンウェイは「ライイング・ゲーム」《The Lying Game》というテレビ番組に出演し、彼がキューブリックを偽装していた事実を認めたといいます。

 アラン・コンウェイという男は、上記のように、長い間「スタンリー・キューブリック」として、外で食事をしていたり、著名人が集まるパーティに顔を出していたり、人々と付き合いを続けていました。

その期間は、90年代前半~96年くらいまでの間だと考えられます。しかし、彼の正体は、ハロウにある旅行代理店で働く普通の男でありました。

 90年代前半、アラン・コンウェイはロンドンに住んでおり、周囲の人々に、自分はスンタリー・キューブリック《「2001年宇宙の旅」「博士の異常な愛情」「時計仕掛けのオレンジ」などで有名な、アメリカの映画監督》であると名乗っていました。

不思議なことに、コンウェイはイギリス人である上に、キューブリックのトレードマークである髭も生やしておらず、2、3本のキューブリック映画を見たことがあるだけで、彼の映画の大ファンというわけでもなかったのです。

それでもコンウェイは、自分が毛ぶかいアメリカ人映画監督だと、いろいろな著名人を納得させましました。

 コンウェイは「キューブリック」として、グルーチョ・クラブという高級レストランや、他の会員制のナイトクラブに出入りしていました。そこでは、慎重に振る舞い、現金を払ったり、小切手に署名をしないように気をつけていました。

コンウェイはナイトクラブのステージ裏へ行き、ジュリー・ウォータースとパトリシア・ヘイズという女優たちに、彼女たちを映画のなかで起用することを考えていると言ったりしました。

コンウェイのことを、世界的に有名な映画監督だと信じた事は、彼女たちだけではありません。

その場にいた、元国会議員のファーガス・モンゴメリー卿や、光のイリュージョニストとして知られる、歌手のジョー・ロングソーンも同様でありました。

映画『ROOM237』を見た後に……キューブリック監督って誰なの!?